ルイ
Premiere上で使える音声エフェクターを紹介するという企画ですが、いよいよ3回目になりました。
第1弾 – ダイナミック編 –
【動画編集・映像制作】音に対する知識を身につけて編集者としてレベルアップしよう#01 – ダイナミック編 -【Premiere Pro】第2弾 – クロマノイズ除去編 –
【映像制作・映像制作】音に対する知識を身につけて編集者としてレベルアップしよう#02 – クロマノイズ除去編 -【Premiere Pro】前回までの2回のエフェクターを使いこなせてきたら、いよいよグラフィックイコライザーの登場です。
「イコライザー」といえばとても有名なエフェクターですが、敢えて3番目にしたのは、前回までに登場した他2つのエフェクターの後に補填的に使うことでその真価が発揮するからです。
それでは早速、どんなエフェクターなのか?どういう風に使っていくのか?を見ていきましょう!
目次
「イコライザー」とは?
イコライザーは簡単に言うと「ピンポイントで周波数帯をブーストしたり、カットすることのできるエフェクター」です。
もっと簡単に言うと、モコモコした音声を聞こえるようにしたり、キンキンしている音を耳障りの良い音にしたり、ブンブン低音がうるさい音をちょうどよくしたりすることができます。
音の仕組みを理解する
そもそも音はどういうものなのか?という部分まで立ち返ることで、このエフェクターの活用法が見えてきます。
「音は何か?」
と聞かれたらすごく難しいように聞こえますが、答えは簡単。
「空気の振動」です。
そしてこれとっても重要ですが、
振動の幅が広い音=低い音
振動の幅が狭い音=高い音
という大前提があります。
Hz – ヘルツ – を理解する
では、この広いとか狭いとか、表現が曖昧だ!ってなりますよね。
それを定義するためにHz – ヘルツ – という単位の登場です。
Hz – ヘルツ – は、音だけに使われる単位ではないのですが、今回の音の場合は音として簡単に説明すると
「1秒間に何回振動する波 = 音なのか?」
ということ。
1ヘルツは、1秒間に1回振動する波 = 音のこと。
ちなみに、人間に近くできるヘルツの範囲は一般的に20Hzから20000Hzと言われています。
しかし実際には・・・
20Hzは1秒間に20回しか振動しない音なので、音階を識別できる「音」というよりかは「振動」にしか感じられません。
大きな音が鳴っているライブハウスから出ても、バスドラムのズンズンとした音が振動として響きますよね。ああいう音です。
逆に、
20000Hzは1回に2万回も振動する音で、超高音です。よっっっぽど耳の良い人なら「キーーーン」という音が聞こえるかもしれませんが、普通はまず聞こえません。
※ちなみに、人は加齢とともにこの「高い音を聞き取る能力」が衰退していきます。この性質を利用したのがもモスキート音です。
あの、「若者に聞こえて、大人には聞こえない、たむろをしないための不快な音」です
これを踏まえた上で、実際にエフェクターのインターフェイスを見てみてください。
グラフィックイコライザーのインターフェイス
縦のバーが横にずらりと並んでいます。
バーの中央に丸いボタンがあり、これを上げるとブースト、下げるとカットになります。
まずこの赤枠に注目してください。
これがさっきのHzです。
一番左に「<30」と書いてありますが、これは要するに「1〜30ヘルツまでの音」のことですね。
逆に一番右は「>25」となっていますので「25000ヘルツより高い音」です。
あれ?さっき人間の耳に聞こえる音は20000ヘルツって言ってなかった?
と気づいた方、鋭いですね!
2万ヘルツ単体で鳴っている音それ自体は人間の耳には聞こえにくいですが、世の中に自然に鳴っている音は通常、いろいろな周波数帯の音を含んでいます。
擬音を考えてみてください。
低い音は「ドンドン」
高い音は「キンキン」
みたいに、「低音成分」を多く含んでいれば低い音に聞こえるし、逆に「高音成分」を多く含んでいれば高い音に聞こえます。
なので一番右の「>25」を、例えば人の声の音声でブーストした場合、高音を含んでいる背後の「シャーーー」という音が増幅されるということです。
グラフィックイコライザーの種類
Premiereには標準装備で3種類のグラフィックイコライザーが搭載されています。
それぞれ10、20、30バンドとなります。
※「バンド」は日本語で「帯域」を指し、これが多くなればなるほど細かな帯域を調整できるようになります。
しかし細ければ細いほど良いというわけではなく、繊細な調整が必要なときは多いバンド数を「大まかなテイストは残したいけど少しだけ微調整を加えたい」という時は少ないバンド数の使用を推奨します。
ちなみに音楽業界ではよく「グライコ」と略され、もうひとつ有名な別のタイプのパラメトリックイコライザーは「パライコ」と略されることがほとんど
10バンドグラフィックイコライザー
20バンドグラフィックイコライザー
30バンドグラフィックイコライザー
グラフィックイコライザーの使い方
理想の音にしよう
このイコライザーはズバリ「理想とする音に近づけるためのエフェクター」です。
音の概念に「良い音・悪い音」というのはありません。
業界水準である「良い音」と、個人の感想である「良い音」にははっきりとした違いがあります。
先に「こんな音にしたい!」という目標物を決め、そこに向けたアレンジをすると上手くいきます。
主目的は「削る」こと
「欲しい帯域をブーストする!」
という認識がされがちなイコライザーですが、音響の世界では「引き算」で使われることも多いもの。
ライブ会場など、ミキサー卓を使ったミキシングでは必ずといっていいほどこのグラフィックイコライザーが使われますが、その用途は
「低音がまわりにくく、ハウリングを起こしにくい環境を作る」
ために、特定のポイントがカットされているほとがほとんど。
グラウンドで例えたら、雑草をひっこぬいて平にならすイメージです。
土地と同じで会場によってまわりやすい音、反響、ハウリングしやすい帯域が異なるので、その環境に応じた対応が必要になります。
人の声を加工する時も同じで、
「この音を良くしよう!」
と思うのだったら、
「そもそも良い音とは何なのか?」
をまず決めて、そこから
「必要なのは引き算なのか、それとも足し算?」
これを考えることがとても有効です。
まとめ
音響の世界も、他のクリエイティビティと同じですごく奥の深いものです。
一度潜ると終わりが見えません。
しかし、突き詰めていくと自分の本当に好きなものや癖、テイストなどがわかってくるので、理解が深くなればなるほど面白くなります。
簡単な世界ではありませんが、ぜひ少しずつ触って、感触を確かめながら前に進んでみてください。
それでは!