突然ですが、皆さんは海外で仕事をしたことがありますか?
旅行で外国へ行くことはあっても、海外で仕事をする機会はなかなかないように思いますが、実際に働いてみると日本の社会環境とは大きく違うことに驚きます。
筆者はこれまで、トロント→バンクーバー→台北と住む環境を変えながら、現地で働き、お金を稼いで生計を立ててきました。
カナダにいた時は完全英語環境で、台湾に行った時は完全中国語環境での勤務も経験しています。
10ヶ月滞在していた台湾では、4つの仕事に並行して取り組んでいたのですが、そのうちのひとつのアルバイト先であるラーメン屋の管理体制があまりにもずさんだったので、上層部に掛け合ってマニュアルを作っただけで「日本人スゲエなおい・・・」となった話をします。
目次
当時の状況
遡ること約10ヵ月。
今年2019年2月、ニーハオとシェイシェイだけで台北降り立った僕は、3カ月間だけ語学学校に通うことだけを決めて台北に乗り込みましたが、十分な貯金がなかったので、生活費をまかなうためにアルバイトをしなければいけませんでした。
このブログでも何度か触れていますが、海外でアルバイトをするならまずは飲食店一択です。
給料もらえるのはもちろんのこと、ただで賄いにありつける可能性が高い上、現地で働く従業員だけでなくお客さんを相手に言語を練習することができます。
今回僕がインターネットの掲示板で見つけたのは、日本資本のラーメン屋です。
いざ面接を受けてみると募集要項に載っていた内容と違う部分が多くあり、いきなり不信感満載でしたが、タダでありつけるラーメンには勝てるはずがありません。
それに話を聞いてみると”日本資本”というだけで僕以外の従業員は全員台湾人かインドネシア人のようです。
台湾人とインドネシア人に囲まれながら、台北の日本発祥のラーメン屋で働く。
面白そうじゃありませんか!
最低賃金:時給600円未満でしたがこれも人生のネタだと思い、挑戦してみる事を決めました。
覆る”決まり”という概念
僕と面接をしてくれた方はその時たまたま日本から台湾に出張をしていた日本本社の部長さんで、感じの良い優しい人だったのですが、役職の関係もあり厨房でラーメンを作るような事はありません。
当時、一番最初に仕事を教えてくれたのは、会社の系列5店舗を見ていたマネージャー的な人です。日本人です。
快活で優しい人でしたが、1日仕事を丁寧に教えてくれて安心したのもつかの間、次回からは日本人と働く機会はほぼゼロでした。
どちらかというと頭が弱い部類である僕が1日で十分な量の仕事を覚えられるわけがありません。
教えてもらった事は必死にメモをとります。
しかしわからない事は次から次へと起きます。
とにかく驚いたことが、決められた規則やルールみたいなものが全然ないのです。
ていうか、、、作る人によって、ラーメンの味が全然違う。。。
いいの?これ。
いや、ダメだろ!
バイト仲間は全部で6、7人いたと思いますが、全員独自の作り方を編み出し、全員が「いや 俺が正しい」と言い、これ本当に同じ店かよというほど見事に全員ラーメンの味が違うというカオスな状況で、新人の僕はどうしたらいいか困惑する毎日。
ある日、ついにトラブルが勃発。
レシピという考え方
マネージャーから教えてもらった作り方に則って、はかりを使いながら慎重に一杯一杯作っていた僕に、とある台湾人の同僚が言いました。
「ルイの作るラーメンはスープの量が少ない。台湾人は薄味が好きだから、もっとスープを入れないと、醤油の味が濃いって文句言われちゃうよ」
いや「薄味好き」とか知らんがな。
これがここのラーメンだろうに。
まぁいつかこうなるだろうなとは思ってはいましたが、実際に言われると説明に困ります。
僕はマネージャーから作り方を教わった際にメモを取っていたので、それを参照しながら作っていたし、同僚にそう言われた時も、部長に直接
「こんな風に言われたんですが薄くした方が良いのでしょうか」
と相談したところ
「レシピが正しいのでそれを守ってください・・・」
との返信が来たので、そうすることにしました。
しかし彼は当然従いません。
自分で作る時はスープをダバダバ入れて、シャバシャバになったお粥みたいなラーメンになります。
嫌がらせ
僕より先に働いていたにもかかわらず、自分の言うことを聞かない僕に対して、彼はいろいろ嫌がらせをしてくるようになりました。
店の立ち上げにわざと遅刻してくる、客が来てもトイレに篭る、使用済みの食器を溜めに溜めて洗わずに先に帰る、(誰でもアクセスできて改ざんし放題の)パソコンでシフト表を勝手にいじり、僕のシフトを削って自分の出勤日を増やす、などです。
僕に対して何かをしてくる分には全然いいんですけど、お客さんに迷惑がかかるのは困ります。
嫌がらせのネタもいい感じに溜まってきたところで、反撃に出ることにしました。
ルールの可視化
そもそも、どうやったらここまでずさんな管理体制になるのか。
それはマニュアル、ハウスルールがないから。
そして、店長が不在だから。
日本でも経験したことあります、調子に乗るバイトリーダーと威厳のない店長の不毛な関係性。
郷に入れば何とやら、なので大抵はほっときますが、お客さんは関係ないはず。
巻き込んではいけないし、内輪は内輪でやってくれって話ですね。
とにかく、僕はマネージャーを通し、本社の部長に連絡し、ハウスルールを改めて設定した上で、レシピも再確認をして全て可視化し、全員が見えるところに置くという「普通だったらどこの店でもやっていること」をやる許可をもらい、実行に移しました。
報告と確認の過程でもちろん、嫌がらせは全部チクッたし、部長もその様子を防犯カメラで後から確認。
働き始めてひと月も経たないバイトがマニュアルを作ることになりました。
形勢逆転
マネージャーも部長も自身の業務に追われ、こうした末端の環境の整備に首が全く回らない状況だったのです。
前職で割と大きなプロジェクトをほぼ同時進行で2つ立ち上げ、中間管理職として働いていた僕は、マニュアルの類を作るのは結構得意な方です。
草案を作り、部長とのやりとりを経て、マニュアルやレシピやハウスルールを印刷して店舗に置き、マネージャーから従業員全員へ通告。
ここまでしないと全員が共通した正しい認識を持たないという状況もなかなか稀ですが、状況は徐々に是正され秩序を取り戻していきました。
店長でも、まして社員ですらないのに行き過ぎた真似を、と例の同僚は思ったでしょうが、ほかのバイト仲間からは「マニュアルを作れるのにどうしてこんなところで湯切りなんてしているんだ」と言われたのには笑いましたw
マニュアルなんてルールを取りまとめただけのもので、文章が書ける人なら誰だって作れます。
パソコンを使ってレイアウトに落とし込むだけで、何も凄いことではないのですが、文書を作成したことがない若い子からは少し尊敬されたようです…。
そこまで手が回らず、現状が把握できずにいた経理のチームからもお礼の連絡がありました。
少し面倒でしたが、ひとつ経験になったのでやって良かったなあと思います。
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ちなみに店の味が安定したころ、例の同僚はいなくなりました。
居心地が悪くなったからとか、前々から問題視されていたから直々に通達がありクビになったとか、仲間と自分達の店を始めるから辞めたらしいとか、色々な噂を耳にしましたが、僕はどうでもよかったので真偽なぞ確かめていませんし、未だに気にもなりません。
二度と会うことはないし、会っても気付かないと思います。
まとめ
どんな国に行って何をしようが、割と頻繁に自分が信じられない環境や状況に遭遇するのが海外です。
僕は決して「台湾でアルバイトをするとこうなる」と言いたいわけではなく、自身の能力を誇示するものでもなく、自分の思う「サービスとしてあるべき形」みたいなものを考え、実行しただけで、もしかしたら薄いスープで作った時期の方が売り上げが良かったかもしれないし、今どうなっているのかもわかりません。
難しくもなんでもないことを難しそうに書いてみましたが、要するに僕が言いたいのは
「こんなものを食わせて台湾人に『なぁんだ、日本のラーメンって大して美味しくないじゃん』って言われてたまるか!!!」
ということです。
ラーメン大好き。
それでは!